渋谷はいつものように人が多い。地方から来ている人も多いようで、センター街を歩くと関西弁が良く耳に入ってくる。外国人が闊歩する風景も当たり前になったが、これは六本木から徐々に移って来ているのかもしれない。
シネクイントで『約三十の嘘』。
前の日に『レディ・ジョーカー』を観たからというわけでもないのだが、この2本は実に対称的な映画だ。
『レディ・ジョーカー』の背景となるのは、巨大企業や警察といった大組織、名もない市民達の人生という長い時間の流れ、そうしたマクロ的な世界。これに対して『約三十の嘘』は電車の車中のみが舞台で、登場人物も6人だけのとてもミクロな世界。
それぞれに「人間的に何かが足りない」ある種のだらしなさを抱えた6人の詐欺師達は、街のどこにもいるようなごく普通の人間だ。彼らが喋り、疑心を抱き、泣き笑い、だらしなさを見せれば見せるほど、その存在が愛しく感じられる。
かつてチームだった詐欺師達の現在の人間関係に大きく影を落とすことになった過去の「事件」は、フラッシュバックで描かれることも無い。にも関わらず、『レディ・ジョーカー』とは反対に、彼らの感情の動きは痛いほどビシビシと良く伝わってくるのだ。
札幌での詐欺の経緯が省略され、その間に人間関係に変化が生まれているのも面白い(『レザボア・ドッグス』を思い出す)。
わずかな原因で変わってしまう関係、どうあがいても本質的に変わらない性格、失敗してもやり直せるという心の持ちよう。全てをひっくるめて描き出すことで、人間という存在の面白さがジワジワと浮かび上がる。
会話劇が得意の大谷健太郎監督が、初めて原作(土田英生の舞台劇)を得て作っているものの、会話のテンポの面白さはいかんなく発揮されている。
チラシや予告編を観ると、ゴンゾウ(パンダの着ぐるみ)がクローズアップされていたり、詐欺師達のクセのあるキャラクターが興味を惹いたりして、ツイストの効いたスタイリッシュなミステリのように思えるが、実は極めてストレートな演出による人間賛歌。これは宣伝の上手さなのかもしれない。
鑑賞メモ
コメント
おお、お引越しおめでとう。写真が入ると歩き回ってる感じがでて、いよいよ荷風ぽいですね。しかし更新のペースが早い。・・・私はやっと最近「ターン」(平山秀幸)をビデオを見たくらいですが、いまひとつ乗れなかったですね。そこそこいい出来だと、逆につまらない。「お好み八ちゃん」級の大物映画はどこに?・・・今回ブライアンウイルソンは「スマイル」なので行くことにしました。1月31日です。
さっそく訪問&コメントありがとう。
気合入れて更新してるんだけど、もうすでに息切れが・・・もはや6日の分、更新滞ってます(笑)
新しいHPを開いていたのは知りませんでした。blogもやってみれば?exciteなんかで、無料で作れますよ。
それにしても『お好み八ちゃん』観たいなあ。