カンフーハッスル

カンフーハッスル
少林サッカー』で一躍日本でも注目を浴びることになったシャウ・シンチーの新作コメディ。
今回は1940年代の香港が舞台で、巨大なセット設営も含め、映画自体がとても大がかりなものになっている。ただし、急な成功で大作作家になってしまっても、バカバカしさはまるで変わっていないのが嬉しい。

良くも悪くも、カンフーとTVアニメに対するシャウ・シンチーの深い愛情が感じられる映画。
映画の構造はとても単純明快、「強者が強者を倒す」というもの。強さを授けられた者だけが、それまで最高位に君臨していた存在をうち負かすことが出来る。シャウ・シンチーは、カンフーをそういうものとして捉えているようだ。
だからこの映画は、一度戦いに敗れた弱者が辛い修行に耐えて復讐する、という日本人好みの展開を踏襲しない。倒すか倒されるかの世界に弱者の逆転などない、と言わんばかり。

といった具合に「強者運命論」(?)とでも言うべき考えが中心に据えられているため、普通なら相当にハードな印象を受けるはずなのだが…そんな中、勢いよく壁にぶつかってへばりつくアニメ的なギャグや、有名な映画(キューブリック!)のもじりが登場したりすると、不意を突かれるというか、あっけにとられてつい笑ってしまう。
ただし、達人をうち破った強者が、また新しく現れた強者に敗れ…という繰り返しで進む物語は、エンタテインメントとしてのカタルシスを欠いてしまうのも事実。つまり主人公自身も、この強者の輪廻の一部でしかなくなるわけで、そのため主人公への感情移入が難しくなってしまう。主人公の幼い頃のロマンスを持ち出してきて、「悪を倒す運命」を強調しようとしているが、とってつけたような印象はぬぐい去れない。

いずれにしてもアンサンブルの面白さが光った『少林サッカー』と単純に比較されてしまうと、辛いところだろうなあ。

3.5

鑑賞メモ

丸の内TOEI

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