犬童一心監督の創る登場人物達は、いつもいつも孤独を抱えている。いわゆる「日常」からほんの少し、しかし画然と切り離された場所に位置づけられ、その中で苦しみや悲しみを味わいながら生を営む人物達。しかし物語が展開するにつれ、その隔絶された場所にやがて暖かな血が通い始めるやいなや、かつて孤独で満たされていたその場所こそが、まるで桃源郷のように思えてくるから不思議。この映画の舞台となる、ゲイ専門の老人ホームもそんな場所の一つ。
前作『ジョゼと虎と魚たち』が小春日和のように穏やかな空を湛えた作品だとすれば、この『メゾン・ド・ヒミコ』は曇天のような映画と言えるかもしれない。塗装会社で細々と働く沙織と、その父にしてゲイの卑弥呼、その若き恋人である春彦の3人を中心とする登場人物達が抱える孤独や悲しみの心模様が、それぞれ一片の雲のように拡がりながら、厚く空を覆っている。癒えない傷を抱えながら日々を過ごす心の雲は、それぞれ雨も晴も忘れてしまったかのように、ひたすらに感情を隠しながらお互い重なり合い、地上へ大きな影を落とすばかりだ。そんな彼らの心の間からわずかな晴れ間が覗く瞬間の眩しさには、この上ない安心感を覚えて止まない。
どこか陰鬱な色調の中で突然放たれる、ポップなミュージカルシーンが楽しい(『二人が喋ってる。』を思い出す)。柴咲コウの仏頂面の美しさも格別。顔立ち(特に目)や『バトル・ロワイヤル』の印象が強すぎて分からないのだが、実は彼女はとびきりのコメディエンヌだと密かに思っている。誰か彼女主演で巻き込まれ型のスラップスティックを企画してくれないだろうか・・・
3.6
コメント
久しぶりのUPですね、待ってました!
『メゾン・ド・ヒミコ』僕も見ました。kenさんのようにコメントすることはできないのですが、素直に「いい映画だったなぁ…」と
思った次第です。
これからもkenさんのレヴュー楽しみしてるんでがんばってくださいね??。
久しぶりのUPですね、待ってました!
『メゾン・ド・ヒミコ』僕も見ました。kenさんのようにコメントすることはできないのですが、素直に「いい映画だったなぁ…」と
思った次第です。
これからもkenさんのレヴュー楽しみしてるんでがんばってくださいね??。
犬童監督は『ジョゼ』ですっかり有名になってしまいましたけど、デビュー作の頃から好きなので、これからも良い映画を撮ってくれたら良いなと思ってます。
こんなに更新の無いブログ(笑)を訪問してくださって、感謝、感謝です。
プロバイダでブログが標準機能になったので、そちらに引っ越すかもしれませんが・・・よろしければ、読んでやってください。
では!