うた魂♪

うた魂♪
『うた魂♪』というタイトルと、明るくカラフルな色使いのポスターからまず受けるのは、少なからずコミカルな印象だ。その期待に違わず映画は、少しとぼけたトーンと賑やかな演出とともに幕を開ける。
急停車したバスの中をスローモーションで高校生が飛び、夏帆が演じる自意識過剰な女の子、かすみの周りには、気持を表す文字が形を持って飛び回る。ゴリが高校生役として登場するのも、そのコミカルなムードを裏打ちする効果としては上々だ。

最後までこのコミカルなトーンが続くのかと思いきや…好きな男の子から合唱の時の顔を「産卵中のサケのよう」と言われたかすみが、このコミカルな世界から一人だけ抜け出した後は、映画のトーンが一定せず、どこかギクシャクし始めるのだ。
コミカルな世界に止まっているゴリが登場する場面も、終盤で明らかになる極めてご都合主義な展開も、コミカルな世界を抜け出したかすみが生きることになるもう一つの世界=極めて真っ当な青春ドラマの世界とは最後までうまく溶け合うことが無い。

その青春ドラマ世界の中心となる合唱シーンが放つパワーには、やはり目(と耳)を惹かれるものがある。ふだん経験の無い分野のモノゴトを習うことになった俳優たちが、映画と現実、双方のラストへ向かって一丸となる…という手法は『ウォーターボーイズ』以来すっかり市民権を得てしまった。正直に言えばやや食傷気味ではあるのだが、それでも共同作業の達成感が爆発するリアルな瞬間のパワーが、人を何度でも感動へと誘うのも事実だ。
音楽と歌が持つ力を信じられる人であれば、ラストシーンで夏帆がつぶやく一言に共感し、感動することができるだろう。

それにしても夏帆という女の子の魅力は、ビックリしたり困ったりした表情を見せた時の、おでこのシワだと思う。そんなところを誉められても当人は困るかもしれないけど。

3.3

鑑賞メモ

新宿ジョイシネマ1

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