「ロングバケーション」をはじめ、TVドラマの脚本家として著名な北川悦吏子の初監督作『ハルフウェイ』。TVをほとんど観ていない身としては、どんな世界や情感を織り成す人なのかよくわからないままの鑑賞で、人気の脚本家というキーワードから「書き込まれた台詞」「意匠を凝らした演出」そうしたものをボンヤリと想像していたのだけれど、待っていたのはそうした技巧とは対極に位置するかのような、素朴で自然体を良しとする世界だった。
高校生の恋愛という、言ってみれば箱庭に納められた小宇宙のような世界を、小宇宙としてあるがまま慈しむように映しとるためには、この方法が最適だと考えたのかもしれない。
恋する若い二人が創り上げる世界は、猫の額ほどに狭い。ふだんの生活で中心を占めるのは、これからの人生で待ち受ける大きな出来事や複雑な人間関係ではなく、好き合うお互いのちょっとした仕草や言葉なのだ。そしてその小さな世界の中では時に、より大きな世界では誤りとされていることすら、正しい意味に変えることが出来てしまう。
二人が正しいと考えることが正しい。
Halfwayを「ハルフウェイ」と読むタイトルは、そんな世界の有りようそのものを意味するのだろう。
そんな世界から抜け出して大人になり成長するということは、全てが宙ぶらりんに置かれた世界を捨て、何かを決断するということに他ならない。
若い体育教師を演じた成宮寛貴が、進路を決めかねて煮え切らない態度の岡田将生に対して、意思を確認するために「本当はどう思うんだ?」と何回も尋ねる。つまりそれは「その世界からそろそろ外に出てくる頃なんじゃないか?」という問いかけなのだと思う。
3.4
鑑賞メモ
シネカノン有楽町2丁目 シアター2
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