落語からのつながりで、何気なく”円紫さんと私”シリーズを手に取ってから、もう20年ぐらいになるだろうか。
折しも当時、”新本格派”が隆盛を極めていたミステリー界にあって、殺人事件が起こらないミステリーが成立するのだという事実にまず純粋に感激し、さらには、簡潔ながら瑞々しい日本語の表現と、優しげでユーモラス、時には凛として厳しい語り口に魅了された。
今でこそ似た作風の作家も多く見つけられるのだけど、当時からやはり、この人の作品はひと味もふた味も違っていたと思う。
それにしても6回目のノミネートと聞いて、ずいぶんと遠回りの末の受賞だったのだなあ…と。北村薫の1ファンとしては、賞を取る取らないはあまり気になるものでもないのだけど、ご本人にしてみれば(当たり前だが)いろいろと事情が違ったりもするものなのでしょうね。
ともあれ、直木賞受賞、おめでとうございます。