おとうと

おとうと
寒いのか暖かいのかよくわからない毎日が続いて、花粉も思ったほど飛ばないかと思えば突如大量に飛んでくれたりなんかして、週末外出のタイミングが難しい。今週こそは街に出てみようかと思えば、強くもなく弱くもなくポツポツとしまらない雨降りだったり…。
根が欲深いせいか、一つの目的だけのために街に出るというのがどうも勿体ない気がする。せっかく電車に乗って出かけるのだから、映画だけ観るのではなく、本屋やCDショップや洋服も見て回りたいのだけど、こんな時期はそうしたことも、どうも億劫になる。
遠出を止めて、近所の映画館で観た『おとうと』。あくまで「芝居をする」ことを強く意識した吉永小百合の台詞回しを中心に据えるだけで昭和の香りが漂うのだが、勿論それ自体が悪いというわけではなく、その素材としての役者をどう料理するかだ。この『おとうと』では、全てにおいて型通りに進むドラマが、観ているこちらが生きる現代との距離を遠くしてしまっている。
何かと騒動を起こす「ごんたくれ」の弟(笑福亭鶴瓶)と、そんな愚弟を献身的に支える姉、そしてその娘という3つの点をそれぞれに繋ぐ筈の線は、あまりに薄い墨のようだ。中心となるべき姉弟の、切っても切れない”血のつながりの濃さ”を感じ取ることが出来ないまま、2時間の映画は幕を閉じてしまう。
しかしそんな中、吉永小百合の娘を演じる蒼井優が、この古めかしい世界にピントを合わせた芝居に無理なく(そのように見える)終始していることに驚かされた。ふだんの作品で観るようなナチュラルな芝居を良しとする向きにとって、おおよそ受け入れがたいようなメリハリの効いた演技。その巧拙は脇に置いておいて、実はこれを一番観ておくべき作品なのかもしれないな…などと思う。
☆☆☆

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