セゾン文化は何を夢みた

他に書きたいことがあったのだけど、ニュースを読んで…
我ながら月並みな表現しか浮かばないものだと思うが、WAVEという店はぼくにとって、80年代に華々しくデビューを飾ったデジタル文化の申し子だった。黒い顔面に針を落とされて、命を削るように音を鳴らすアナログレコードに代わって現れたのは、行きつ戻りつが自由自在、半永久的に生き続ける不死身のCD。グレーのビニール袋をぞんざいに持ち帰り、とても開けづらい輸入盤CDのビニールをイラついて破りはするものの、アナログ世界で身についた丁寧な扱いは簡単に止められず、指紋を付けないように円盤の端と端をそっと持ち上げてプレーヤーに落とす。貴重品のように思えたCDが並ぶショップ巡りの楽しさも薄れた今は、ディスクの持ち方もすっかり粗雑になってしまった。
あれからさらにデジタル化は進み、光ディスク(!)がストリーミングとダウンロードに取って代わられようとする頃、そのWAVEがひっそりと幕を閉じるというのは、出来すぎた何かの符牒なんだろうか。

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